2025.07.29

  • コラム

アルコールチェッカーの校正してますか?誤作動が招く重大リスクとは

アルコールチェッカーは、飲酒運転の防止や安全運転の管理に、多くの企業や個人で活用されています。しかし、「一度購入すればずっと使える」と誤解されていることも少なくありません。

正確な測定を続けるには、アルコールチェッカーの定期的な校正とメンテナンスが欠かせません。

これを怠ると誤検知や測定ミスが起こり、企業や個人の信用、安全性に大きな影響を及ぼすおそれがあります。さらに、法令でも「常時有効に保持すること」が義務づけられており、点検や管理を怠れば重大な責任を問われる可能性もあります。

この記事では、アルコールチェッカーの校正とメンテナンスの重要性を、「安全」「法令」「運用コスト」の観点からわかりやすく解説します。

「精度を保つ」ために欠かせないアルコールチェッカーの校正とは

校正とは、アルコールチェッカーのセンサーが正確に動作しているかを確認し、必要に応じて調整する作業を指します。

センサーは使い続けるうちに経年劣化し、測定精度が徐々に低下するため、定期的に基準値とのずれを修正する必要があります。

校正を怠ると、「数値が出ている=正しい」と誤信し、実際には不正確な測定結果を信じてしまう事態になりかねません。

アルコールチェッカーの校正が必要な理由
校正を行えば、経年劣化による誤差を修正し、精度を維持できます。

センサーの特性とズレの発生メカニズム
センサーは湿度・温度・使用頻度などの影響で、少しずつ誤差が蓄積します。

法令上も校正が必要とされている
道路交通法では「アルコール検知器は常時有効に保持すること」とされており、精度の維持もその一環です。

校正しないまま使用し続けるとどうなるのか

校正をせずに使用を続けると、さまざまなリスクが生じます。

誤検知・測定ミスによる判断ミス
実際には飲酒していないのに反応したり、飲酒していても反応しなかったりすると、現場の対応に混乱が起こります。

重大なコンプライアンス違反につながる
誤って「飲酒していない」と判定された運転者が事故を起こすと、管理責任が問われる可能性があります。

企業としての信頼を損なう可能性
アルコールチェックの不備が明るみに出れば、企業の信頼や社会的評価に大きな影響を与えます。

誤作動が招く“取り返しのつかない事態”

過去には、アルコール検知の不備によって、重大な事故や処分が発生したケースもあります。

事故例1:検知器の未校正で飲酒運転を見逃し、重大事故が発生
定期校正を行っていなかったため、基準値以下の反応を「安全」と誤って判断。結果的に事故を起こし、運転者と企業双方に重い責任が課せられました。

懲戒・処分のリスク
飲酒運転に関与した企業関係者が「免職」や「損害賠償」などの処分を受けた例もあります。

社会的制裁の実例
自治体職員や教職員が飲酒運転で逮捕され、新聞報道や退職勧告によって社会的信用を失った事例もあります。

こうしたトラブルは、機器の校正とメンテナンスを定期的に行っていれば、多くが防げた可能性があります。

見逃し厳禁!センサー劣化や寿命のサインとは

アルコールチェッカーのセンサーには、一定期間の使用で性能が低下する「寿命」があります。

この劣化は目に見えにくく、気づかないうちに精度が落ちている可能性があります。

とくに以下のような症状が出た場合は、センサーの劣化が進んでいるおそれがあります。

反応が遅くなる/測定値の振れが大きくなる
同じ条件でも測定結果にばらつきが出るようになった場合は、精度の低下が疑われます。

異常な数値(常に0.00や最大値)を示す
呼気にアルコールが含まれていないのに反応する、または逆に反応しない場合は注意が必要です。

測定に時間がかかる/感度が極端に鈍くなる
反応に時間がかかるようであれば、センサーの機能が衰えている兆しです。

センサー方式によって異なる寿命と注意点

アルコールチェッカーには主に「半導体式」と「燃料電池式」の2種類があり、それぞれに寿命や特徴の違いがあります。

半導体式センサー
約半年〜1年程度で精度の低下が始まりやすく、温度や湿度の影響も受けやすいタイプです。価格は抑えられますが、定期的な交換や校正が必要です。

●燃料電池式センサー
1〜3年ほどの寿命があり、より高精度な測定が可能です。価格は高めですが、信頼性が重視される業務用に向いています。

機器を選ぶときは、使用頻度・求める精度・運用コストを総合的に判断することが大切です。

「正確に測れているはず」が最も危険

センサーの劣化はゆっくり進行するため、利用者が「問題ない」と思い込んでしまうことがあります。

こうした「見えない誤差」が、事故やトラブルの原因になるおそれがあります。

感覚的に“正常”と判断することの危うさ
呼気中のアルコール濃度はわずかな量でも結果に影響を与えるため、視覚や臭いだけで判断するのは危険です。

過信が事故につながった実例
過去には、「昨日は反応していたから大丈夫」と思い込んで使用し、事故を引き起こした事例もあります。

精度への過信が大きなリスクとなるため、定期的な校正で客観的な確認を行うことが欠かせません。

法令で求められる管理義務と“常時有効”の意味

道路交通法や警察庁の通知では、アルコール検知器の管理に関して明確な義務が定められています。

とくに「常時有効に保持すること」が強調されており、これは単に所有しているだけでは不十分です。

常時有効とは
「機器が正常に作動し、故障していない状態を維持すること」を意味します。

管理者の責任範囲
安全運転管理者や補助者が、取扱説明書に沿って定期的に点検・管理を行う必要があります。

未管理がもたらす罰則リスク
酒気帯び確認を怠ると、コンプライアンス違反とされ、行政指導や改善命令の対象になるおそれがあります。

いつ・どこで・誰が? 校正・メンテナンスの頻度と依頼方法

アルコールチェッカーの校正や点検は、適切なタイミングで確実に行うことが大切です。

多くのメーカーや専門業者では、次のような頻度や体制が推奨されています。

校正の目安:6ヶ月〜1年ごと
使用頻度や機種によって異なりますが、年1回の校正が一般的です。業務使用の場合は、半年ごとの点検が望ましいこともあります。

依頼先:メーカー・認定業者への外注が基本
専用の校正器や調整機材が必要なため、社内での対応には限界があります。精度を確保するには、専門業者への依頼がもっとも確実です。

点検期間と費用の目安
校正には1〜2週間の預かり期間がかかり、費用は1回あたり5,000円〜10,000円程度が相場です。

事前に代替機を手配したり、点検スケジュールを調整しておくことで、現場業務への影響を抑えることができます。

自社内で対応できること・できないことを見極めよう

すべての作業を外注するのではなく、社内で対応できる点検もあります。

対応できること
・バッテリー残量の確認
・電源オン・オフの動作確認
・エラー表示のチェック
・測定時間や反応スピードの変化を把握すること

対応できないこと
・センサーの数値調整
・基準ガスとの比較校正
・内部異常の診断や修理

万が一誤作動が確認された場合は、すぐに使用を中止し、専門業者に点検を依頼してください。

「点検できない機種」は選定時に要注意

購入時は価格やデザインだけで判断せず、校正・点検が可能かどうかも必ず確認しましょう。

校正対応の可否が明記されているか
取扱説明書やメーカーのサイトで、校正に対応しているかどうかを確認できる機種を選ぶのが基本です。

外部校正サービスに対応しているか
一部の安価な市販モデルは校正に対応しておらず、使い捨て前提で作られている場合もあります。

センサー交換の可否
精度を維持するには、校正だけでなくセンサーの交換が必要なこともあります。交換可能な機種のほうが安心です。

対応機種の選び方と導入時チェックリスト

正確な測定と安定した管理体制を実現するには、導入前の機種選びが重要です。

見た目や価格だけでなく、「管理のしやすさ」や「継続使用の信頼性」に注目して選ぶことが求められます。

校正が可能であるか
長期間使うことを前提にするなら、校正に対応した機種であることが必須です。

センサー方式と耐用年数の確認
半導体式か燃料電池式かによって、精度・寿命・維持コストが大きく異なります。

記録・出力機能の有無
データ保存や監査対応を考えるなら、測定結果を記録・出力できるタイプが望ましいです。

サポート体制の有無
故障や不具合があったとき、迅速に対応してもらえるかも長期運用には欠かせない要素です。

手段は一つじゃない!対応方法の選択肢を比較

アルコールチェッカーの管理体制は、企業の業務内容やリソースに応じてさまざまな方法が取られています。

ここでは代表的な管理方法を紹介し、それぞれの特徴と課題を整理します。

紙台帳+市販機器
最もシンプルな方法で、市販の簡易チェッカーを使い、測定結果を紙に手書きで記録します。

スタンドアロン型測定器+記録媒体(PCなど)
測定機に内蔵されたメモリから、PCやUSBでデータを取り出し管理する方式です。

クラウド型システム+モバイル端末連携
測定結果をクラウドに自動記録し、遠隔での確認や分析が可能な方法です。業務効率に優れています。

紙台帳・市販機器の課題と限界

導入しやすい反面、この方式には重大なリスクや非効率さがあります。

記録ミス・記録漏れのリスク
手書きによる記録は、人為的なミスや記入漏れが発生しやすく、証跡管理が弱くなります。

不正が起こりやすい
管理者が不在の場面では、自己申告に頼ることになり、運用が形骸化するおそれがあります。

監査や事故時に証明力が乏しい
記録が曖昧だと、本人確認や時間・場所の特定ができず、トラブル時に不利になる場合があります。

これらの課題は、管理体制が属人化していることにも起因しています。

クラウド型が選ばれる理由とは?

近年は、法令対応と記録管理を効率よく行えるクラウド型システムへの注目が高まっています。

測定データの自動記録・一元管理が可能
日付・時刻・GPS情報・本人確認などのデータが自動で記録され、集約されます。

リアルタイムでの確認・管理ができる
管理者は外出先からでもダッシュボードで状況を把握でき、異常時にはすぐ対応できます。

記録・監査対応が簡素化される
Excel出力やデータ抽出が可能で、報告書の作成や監査準備がスムーズになります。

クラウド型は、とくに複数拠点や直行直帰の勤務形態が多い企業にとって、有効で柔軟な選択肢です。

クラウド型なら校正管理もラクにできる

クラウド型システムの多くは、アルコールチェッカー本体のメンテナンスや校正管理にも対応しています。

メンテナンス時期の通知機能
センサーの寿命や校正期限が近づくと、自動でアラートが表示されます。

交換履歴の自動保存
どの機器をいつ交換・校正したかの履歴がシステムに記録され、管理の抜け漏れを防げます。

故障時の迅速な代替対応が可能
サポート窓口とスムーズに連携でき、メンテナンス中でも代替機の手配が行えます。

こうした機能により、多拠点運用や外勤の多い企業でも、校正管理の精度とスピードが向上します。

不正防止・証跡管理の強化にもつながる

クラウド型システムでは「いつ・誰が・どこで測定したか」を正確に記録でき、不正の防止にも役立ちます。

本人確認機能(顔認証・ID入力)
運転者本人が測定したことを客観的に証明できます。

測定履歴の改ざん防止
ログは自動保存され、手動での編集や削除ができません。監査や事故時の証拠としても有効です。

異常検知アラート機能
異常な測定結果が出た場合には、すぐに管理者に通知され、迅速な対応が可能になります。

これらの機能により、現場での不正使用やトラブルを防ぎ、企業の安全管理体制を強化できます。

まとめ

アルコールチェッカーは、正確に測定できてこそ安全管理の意味があります。どれだけ高性能な機器でも、校正やメンテナンスを怠れば、測定結果は信用できません。

誤作動を放置すれば、飲酒運転の見逃しや冤罪につながり、事故や処分、社会的信用の失墜という深刻な事態を招くおそれがあります。

また、道路交通法では「常時有効に保持すること」が義務づけられており、使用者や管理者には、定期的な点検と管理が求められています。

安全運転管理者や企業の担当者は、「一度買えば終わり」ではなく、使用後の校正やメンテナンス体制まで含めて導入を検討することが大切です。

そのためには、次のような行動をおすすめします。

校正・点検履歴を確認し、適切な時期に再点検を行う
使用中の機器が校正に対応しているか確認する
必要に応じて、クラウド型など記録と管理がしやすい体制を検討する

点検されていないアルコールチェッカーは、「使えない」と言っても過言ではありません。

事故を防ぎ、社会的責任を果たすためにも、今日から「校正とメンテナンスを前提とした運用」に一歩踏み出しましょう。