2026.01.26

  • コラム

アルコールチェックは運転後も必要?法改正後の義務と正しい実施手順を解説

社用車を使う業務において、運転前のアルコールチェックはすでに習慣化されている職場も多いでしょう。しかし、「運転後のチェック」についてはどうでしょうか。「終わった後だから大丈夫」と、つい後回しや形だけの確認になっていませんか。

実は、アルコールチェックは運転前だけでなく、運転後も法律で定められた義務です。2023年12月からは白ナンバー事業者に対してもアルコール検知器の使用が完全に義務化され、より厳格な運用が求められるようになりました。知らず知らずのうちに法令違反の状態になってしまわないよう、正しい知識を持つことが大切です。

この記事では、安全運転管理者や担当者の方が自信を持って業務を行えるよう、運転後のチェックが必要な理由から具体的な実施手順までを詳しく解説します。法令に沿った記録項目の詳細や、もしもの時のリスクについても網羅していますので、ぜひ参考にしてください。

アルコールチェックは「運転後」も必須!義務化された実施タイミング

安全運転管理者が行うべきアルコールチェックは、法律によって明確なタイミングが定められています。結論からお伝えすると、チェックは「運転前」と「運転後」の1日2回行うのが基本原則です。どちらか片方だけでは法令遵守にはなりません。

運転前と運転後では、それぞれ確認する目的が異なります。同じアルコールチェックという行為でも、その意図を正しく理解しておくことで、ドライバーへの指導や説明もしやすくなるはずです。それぞれの目的を整理してみましょう。

●運転前のチェック
運転前の最大の目的は、酒気帯び運転を未然に防止することです。体内にアルコールが残っていないかを確認し、少しでも反応があれば運転を許可してはいけません。事故を防ぐための最後の砦と言えます。

●運転後のチェック
運転後のチェックは、勤務中に飲酒をしなかったという事実確認が目的です。業務中に隠れて飲酒するケースや、休憩中の飲酒などを防ぐ意味合いがあります。一日の業務をクリーンに終えるための重要な手続きです。

また、実務上どうしても運転の「直前」や「直後」にチェックを行うのが難しいケースもあるでしょう。そのような場合は、必ずしもハンドルを握る瞬間に合わせる必要はありません。業務の開始時(出勤時)や終了時(退勤時)に合わせて実施することも認められています。

ただし、出勤時や退勤時に行う場合でも、チェックを行うまでは運転をしてはいけませんし、チェック後すぐに帰宅する必要があります。あくまで「運転を含む業務」の前後に確認を行うという原則を守りながら、自社の働き方に合わせて運用ルールを定めてください。

法改正で確定した安全運転管理者の義務と業務内容

道路交通法の施行規則改正により、安全運転管理者の業務内容は以前よりも具体的かつ厳格になりました。特に2022年からの段階的な改正を経て、2023年12月からはアルコール検知器の使用が完全に義務化されています。

これまでの目視確認だけでは不十分となり、機器を用いた客観的な数値による確認が必須となりました。ここでは、法改正によって確定した安全運転管理者の具体的な義務内容について、ポイントを絞って解説します。

●アルコール検知器を使用した酒気帯びの有無の確認
運転前後の確認時には、必ず国家公安委員会が定める基準を満たしたアルコール検知器を使用しなければなりません。目視等の確認に加え、機器による測定結果を併用することで、より確実な判定を行います。

●確認内容の記録と1年間の保存
アルコールチェックを実施した結果は、単に確認するだけでなく記録として残す必要があります。記録簿を作成し、そのデータを1年間保存する義務があります。紙での保存はもちろん、電子データでの管理も認められています。

●アルコール検知器の常時有効保持
いつでも正常に機能するアルコール検知器を備え付けておく必要があります。故障がないか定期的に点検し、週に一度や毎日など、頻度を決めてメンテナンスを行うことが求められます。

このように、安全運転管理者の業務は多岐にわたります。法律で定められた義務を怠ると、企業のコンプライアンス違反となるだけでなく、万が一事故が起きた際に責任を問われることになります。

日々の業務は忙しいかと思いますが、これらの義務は従業員の命と会社の信頼を守るための土台です。一つひとつの業務の意味を理解し、抜け漏れのない体制を作っていきましょう。

【実践ステップ】法令に準拠したアルコールチェックの流れ

法律で定められたアルコールチェックを確実に実施するためには、正しい手順を理解し、日々のルーティンに組み込むことが重要です。手順があいまいだと、確認漏れや記録ミスが発生しやすくなります。ここでは、運転前と運転後それぞれの具体的な流れを解説します。

1. 運転前のチェック手順

業務を開始し、車に乗る前に行う最初の手続きです。この段階で異常があれば、当然ながら運転を許可することはできません。安全な一日のスタートを切るために、以下の手順を確実に実行してください。

●安全運転管理者への申告と立ち会い
ドライバーは運転予定があることを管理者に伝え、管理者の立ち会いのもとで検査の準備をします。管理者はドライバーの顔色や話し方、呼気の臭いに異常がないかを目視等で確認します。

●アルコール検知器による測定
管理者の目の前で、ドライバーがアルコール検知器に息を吹き込みます。測定が完了するまで正しく機器を操作し、表示された数値を確認します。数値が0.00mg/Lであることを互いに確認してください。

●結果の記録と運転指示
測定結果や確認日時などの必要事項を記録簿に記入します。問題がなければ、管理者はドライバーに対して鍵を渡し、安全運転の指示を出して業務を開始させます。

2. 運転後のチェック手順

一日の業務を終え、車を降りた後に行う手続きです。運転後のチェックは忘れがちですが、法令遵守のために欠かせないステップです。疲れがある時間帯ですが、最後まで気を抜かずに実施しましょう。

●業務終了報告と再度の立ち会い
帰社後、ドライバーは速やかに管理者のもとへ行き、業務終了の報告を行います。運転前と同様に、管理者はドライバーの様子を目視で確認し、疲労度や体調の変化にも気を配ります。

●アルコール検知器による測定
再度、アルコール検知器を使用して測定を行います。業務中に飲酒をしていないことを証明するための重要な工程です。万が一アルコールが検出された場合は、直ちに事情を確認し、適切な対応をとる必要があります。

●結果の記録と業務完了
測定結果を記録簿に記入し、管理者に提出します。管理者は内容を確認し、問題がなければその日の運転業務は完了となります。

3. 管理者による確認と保存

チェック自体が終わっても、記録が正しく残されていなければ義務を果たしたことにはなりません。管理者は提出された記録に不備がないか、最終的なチェックを行う責任があります。

●記録内容の不備確認
ドライバーが記入した記録簿に、空欄や誤りがないかを確認します。特に日付や時間、測定数値の記入漏れはよくあるミスですので、その場で見直しを行い、必要であれば修正を指示します。

●記録簿の保管管理
完成した記録簿は、1年間保存することが法律で義務付けられています。紙で管理する場合はファイリングし、電子データの場合はバックアップを取るなどして、いつでも閲覧できる状態で大切に保管してください。

アルコールチェック記録簿に記載すべき「法定8項目」

アルコールチェックの結果を記録する際、どのようなフォーマットを使えばよいか迷うことがあるかもしれません。実は、記録すべき項目は法律によって明確に定められています。独自の項目だけでなく、以下の法定8項目を必ず網羅した記録簿を作成する必要があります。

必須項目一覧

法令で求められている記録項目は全部で8つあります。これらが一つでも欠けていると、監査などの際に指摘を受ける可能性があります。自社の記録簿が基準を満たしているか、今一度確認してみてください。

●確認者の氏名
チェックを実施した安全運転管理者、または副安全運転管理者等の氏名を記載します。

●運転者の氏名
チェックを受けたドライバーの氏名を記載します。

●自動車の登録番号または識別できる記号・番号
どの車両を使用したかが特定できるよう、ナンバープレートの番号や社内の管理番号を記載します。

●確認の日時
アルコールチェックを実施した正確な日付と時間を記載します。運転前と運転後、それぞれの時間を記録する必要があります。

●確認の方法
対面で実施したか、電話やカメラ等のIT機器を使用したかなど、具体的な確認手段を記載します。また、アルコール検知器を使用したことも明記します。

●酒気帯びの有無
アルコール検知器の測定結果や目視確認の結果に基づき、酒気帯びの状態があったかどうかを記載します。「なし」や「0.00mg/L」といった具体的な記録が必要です。

●指示事項
管理者がドライバーに対して行った指示の内容を記載します。例えば「安全運転の励行」や「休憩の取得指示」などが該当します。

●その他必要な事項
上記以外に特記すべき事項があれば記載します。検知器の故障時の対応や、ドライバーの体調不良などがあればメモを残します。

記録時の注意点

法定8項目を埋めるだけでなく、その内容が具体的かつ正確であることが求められます。特に確認方法の記載については、後から見返した際に状況が分かるようにしておくことが大切です。

●具体的な実施状況の明記
確認方法の欄には、単に「確認済」とするのではなく、「対面確認および検知器使用」のように具体的に書くことを推奨します。また、直行直帰で電話確認を行った場合は、「電話確認および検知器使用」と記載し、状況を区別できるようにしてください。

状況別に見る正しい実施・運用ポイント

アルコールチェックの基本ルールは理解していても、実際の業務では「こんな時はどうすればいいの?」というイレギュラーな場面に遭遇することがあります。ここでは、よくある状況別の正しい対応方法を解説し、運用上の迷いを解消します。

原則は「対面」かつ「目視・検知器」の併用

最も基本となるのは、安全運転管理者とドライバーが直接顔を合わせて行う「対面確認」です。これは単に検知器の数値を読み上げるだけでなく、管理者が五感を働かせてドライバーの状態をチェックするために重要です。

●目視確認の重要性
検知器はあくまで体内のアルコール濃度を測る道具です。しかし、二日酔いで体調が悪そうだったり、顔が赤らんでいたりといった情報は、検知器だけでは拾いきれない場合があります。管理者は顔色、呼気の臭い、声の調子などを直接確認し、総合的に運転の可否を判断してください。

●機器と人のダブルチェック
対面確認と検知器による測定をセットで行うことで、チェックの精度は格段に上がります。「検知器がOKだから大丈夫」と過信せず、管理者の目による確認を怠らないようにしましょう。

直行直帰や出張時は「カメラ・通話」で実施

営業職や現場仕事などで、オフィスに立ち寄らずに直行直帰するケースや、遠方への出張時などは、物理的に対面での確認が不可能です。このような場合は例外的に、IT機器を活用した「非対面」での確認が認められています。

●双方向通信ツールの活用
対面できない場合は、携帯型のアルコール検知器をドライバーに携行させます。そして、スマートフォンやタブレットのカメラ機能、テレビ電話アプリなどを使用し、リアルタイムで測定の様子を確認します。管理者は画面越しにドライバーの顔色や測定結果を確認し、声を聞いて状態を判断します。

●一方的な報告はNG
ここで注意が必要なのは、メールやチャットで「測定しました。0.00でした」と報告するだけでは不十分だという点です。法律では、管理者が直接確認できる状況を求めています。必ずリアルタイムでやり取りができる「通話」や「ビデオ通話」を行いましょう。どうしても通話が難しい場合でも、測定結果が表示された検知器と本人の顔が写った写真を送付させ、直後に電話で確認するなど、確実性の高い方法をとってください。

確認者が不在の場合の体制づくり

安全運転管理者が会議中や外出中、あるいは休暇などで不在になることもあります。管理者がいないからといって、アルコールチェックを行わずに運転させることは許されません。

●副安全運転管理者や補助者の選任
管理者が不在の時に備え、あらかじめ「副安全運転管理者」や、業務を代行できる「補助者」を選任しておく必要があります。補助者は特別な資格が必要なわけではありませんが、管理者と同様に正しいチェック手順と判断基準を理解している必要があります。

●組織全体でのバックアップ体制
誰か特定の人がいないと業務が回らないという状況は、リスク管理上好ましくありません。複数のスタッフがチェック業務を行えるよう教育を行い、常に誰かが対応できるシフト体制や運用ルールを整えておきましょう。

アルコールチェッカーのタイプと正しい使い方

アルコールチェックの必需品である検知器(チェッカー)には、いくつかの種類があります。それぞれの特性を理解し、自社の運用スタイルに合ったものを選ぶこと、そして正しく使うことが、誤検知やトラブルを防ぐ鍵となります。

吹きかけ式

吹きかけ式は、機器のセンサー部分に息を吹きかけるだけで測定できるタイプです。非接触で測定できるため衛生的で、手軽に使えるのが特徴です。

●メリットと注意点
最大のメリットは、何と言ってもその手軽さとスピードです。短時間で多くの人をチェックする場合に向いています。しかし、周囲の空気の影響を受けやすいため、風の強い場所や、香水・整髪料などのニオイが強い場所では誤反応を起こす可能性があります。測定時は換気の良い、ニオイの少ない場所で行うよう注意が必要です。

ストロー式・マウスピース式

ストローや専用のマウスピースを機器に装着し、そこから直接息を吹き込むタイプです。呼気が漏れにくく、センサーに直接届くため、測定精度が高いのが特徴です。

●メリットと注意点
周囲の環境に左右されにくく、より正確な数値が得られるため、厳密な管理が求められる運送事業者などでよく採用されています。一方で、使用するたびにストローやマウスピースを交換、あるいは洗浄・消毒する必要があるため、ランニングコストや衛生管理の手間がかかります。備品の在庫管理も忘れずに行う必要があります。

義務違反や飲酒運転が発生した場合の罰則リスク

「少しくらいならバレないだろう」「忙しいから記録は適当でいいや」という甘い考えは、取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。アルコールチェックの義務違反や、実際に飲酒運転が発生してしまった場合、企業もドライバーも重い責任を負うことになります。

安全運転管理者制度違反(企業・管理者への罰則)

安全運転管理者の選任を怠ったり、必要な業務(アルコールチェックや記録保存など)を行わなかったりした場合、企業や代表者、管理者に対して罰則が科される可能性があります。

●具体的な罰金と行政処分
安全運転管理者の選任義務違反や、公安委員会からの是正命令に従わなかった場合などには、50万円以下の罰金が科されることがあります。また、違反が繰り返されたり、重大な事故につながったりした場合は、車両の使用停止命令などの行政処分を受ける可能性もあり、事業継続に大きな影響を与えかねません。

ドライバーへの刑事罰・行政処分

飲酒運転をした本人には、非常に厳しい刑事罰と行政処分が待っています。

●酒気帯び運転と酒酔い運転
呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上で「酒気帯び運転」となり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。さらに酩酊状態で運転する「酒酔い運転」の場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金と、さらに重くなります。

●免許取消と社会的制裁
違反点数の加算により、一発で免許取消や長期の免許停止処分となります。職を失うだけでなく、ニュースなどで報道されれば、企業の社会的信用も一瞬にして地に落ちてしまいます。

まとめ

ここまで、運転後のアルコールチェックの必要性や具体的な実施手順、そしてリスク管理について解説してきました。

運転後のチェックは、単なる業務の締めくくりではなく、法令で定められた重要な義務です。2023年12月からの法改正により、検知器の使用が完全に義務化された今、曖昧な運用は許されません。

今回解説した「運転前・後の確実な実施」「法定8項目の記録保存」「状況に応じた正しい確認方法」を徹底することで、法令違反のリスクを回避し、何よりも大切な従業員の安全と企業の信頼を守ることができます。

もし、日々の記録管理や検知器のメンテナンスに負担を感じているのであれば、クラウド管理システムなどのツール導入を検討するのも一つの手です。業務効率化とコンプライアンス強化を同時に実現できるでしょう。

まずは明日から、今の運用体制に抜け漏れがないか、記録簿の項目は足りているか、現場と管理側で再確認することから始めてみませんか。安全な業務運営への第一歩を、ぜひ踏み出してください。