2025.12.24

  • コラム

アルコールチェックの「なりすまし」はこう防ぐ!顔認証とGPSで実現する鉄壁の管理術

アルコールチェックの義務化対応が進む中、現場の管理者様から「本当にドライバーが正しく検査しているか不安だ」という声をよく耳にします。

日々の業務に追われる中で、すべての検査を目視で監視し続けることは現実的ではありません。

しかし、もし見えないところで不正が行われ、飲酒運転事故が起きてしまったら、会社は取り返しのつかない事態に陥ります。

「信じたいけれど、万が一があったら……」という管理者様の不安を解消し、確実に組織を守るためには、人の目だけに頼らない仕組みが必要です。

不正を未然に防ぎ、ドライバーと会社双方を守るための解決策として、顔認証やGPSといったテクノロジーの活用が今、強く求められています。

アルコールチェックの不正が招く「企業の社会的死」と法的リスク

アルコールチェックにおける不正行為は、単なる社内ルールの違反では済まされません。

ひとたび飲酒運転事故が発生すれば、その責任は当事者だけでなく、管理体制そのものに向けられます。

「知らなかった」では済まされない厳しい現実があり、企業としての存続すら危ぶまれる深刻な事態を招きかねません。

不正を見過ごすリスクがいかに巨大であるか、まずはその法的・社会的責任の重さを正しく理解する必要があります。

道路交通法違反「ほう助」による書類送検・逮捕の可能性

ドライバーが飲酒運転で検挙された場合、警察の捜査は「なぜ飲酒運転ができたのか」という管理体制の不備にも及びます。

もし点呼やアルコールチェックがずさんで、事実上飲酒運転を黙認できる状態だった場合、安全運転管理者が責任を問われます。

最悪の場合、道路交通法違反の「酒気帯び運転ほう助」や「酒酔い運転ほう助」の容疑で、管理者や企業の代表者が逮捕される可能性があります。

実際に、管理者が適切な指示を出していなかったとして書類送検される事例も発生しており、これは決して他人事ではありません。

刑事罰を受けることになれば、管理者個人の人生にも大きな影響を及ぼすことになります。

法令遵守は組織を守るための最低ラインであり、形式だけのチェックでは法的責任を回避することは不可能です。

事業停止処分や社会的信用の失墜による経営ダメージ

運送業などの緑ナンバー事業者の場合、行政処分として「車両使用停止」や「事業停止」といった重いペナルティが科されます。

車両が稼働できなければ、その期間の売上がゼロになるだけでなく、荷主に対する契約不履行となり、多額の損害賠償請求にもつながります。

白ナンバー事業者であっても、コンプライアンス違反企業として報道されれば、社会的信用は一瞬にして地に落ちます。

銀行からの融資がストップしたり、取引先から契約を解除されたりと、経営基盤そのものが揺らぐ事態に発展します。

インターネット上に残る「飲酒運転企業」という汚名は、数年が経過しても消えることはなく、採用活動や新規開拓にも長期的な悪影響を及ぼします。

一つの不正が招く結果は、まさに「企業の社会的死」と言えるほど致命的なのです。

現場で横行しやすい「なりすまし」や「すり抜け」の不正手口

管理者がどれほど厳しく指導しても、監視の目が届かない場所では「バレなければいい」という心理が働きがちです。

アナログな管理方法では防ぎきれない、現場で実際に起きている不正の実態を知ることは、対策への第一歩です。

性善説だけでは運用が困難な理由を、具体的な手口とともに解説します。

他人に測定させる「替え玉・身代わり」検査

最も典型的で防ぐのが難しいのが、飲酒していない第三者に代わりに測定させる「なりすまし」です。

対面点呼ができない直行直帰や早朝・深夜の業務では、電話点呼だけでは本人が測定しているか確認する術がありません。

「少しお酒が残っているかもしれない」という焦りから、同僚や家族に検知器を渡して息を吹き込ませる事例が後を絶ちません。

●飲酒していない同僚に測定を依頼するケース
管理者の目が届かない駐車場や車内などで、飲んでいない同僚に検知器を渡し、代わりに測定してもらう手口です。

●家族や通行人に協力を頼むケース
自宅からの直行時や出張先などで、家族に測定させたり、極端な例では通りがかりの人に頼んで測定したりする事例もあります。

測定をごまかすための悪質な細工や虚偽報告

検知器そのものを騙そうとしたり、記録をごまかしたりする手口も存在します。

アルコール検知器のセンサー特性を悪用しようとする行為や、アナログな記録方法の隙を突いた改ざんは、目視確認なしでは見抜けません。

一度でも成功体験をしてしまうと、常習化する恐れがあり非常に危険です。

●エアダスターやポンプを使ったセンサーへの細工
人間の呼気ではなく、エアダスターや空気ポンプを使って清浄な空気を吹き込み、アルコール反応が出ないように工作する手口です。

●手書き記録や報告数値の改ざん
検知器に数値が表示されているにもかかわらず、「0.00mg/l」と虚偽の数値を手書きで記録したり、電話報告で嘘をついたりするケースです。

顔認証システムによる「本人確認」が不正抑止の決定打になる理由

こうした不正を根絶するためには、人の良心に訴えるのではなく、技術的に不正ができない環境を作ることが不可欠です。

そこで注目されているのが、スマートフォンのカメラなどを活用した顔認証システムです。

「誰が」測定したかを客観的なデータとして残すことで、強力な抑止力が生まれます。

測定中の顔画像を自動保存し、物理的ななりすましを封じる

顔認証機能付きのアルコール検知システムは、息を吹き込む瞬間の顔画像を必ず記録します。

測定結果と本人の顔がセットで保存されるため、物理的に他人へ代わってもらうことが不可能です。

「見られている」という意識をドライバーに植え付けることが、何よりの不正防止策となります。

●測定時の顔画像が証拠として残る仕組み
検知器に息を吹き込んでいる最中の顔を撮影し、測定データと紐付けてクラウド上に保存することで、言い逃れのできない証拠となります。

●マスクやサングラス着用時の判定精度
近年のシステムは精度が高く、マスクやサングラスで顔を隠そうとしても認証エラーとなったり、着用を外すよう警告したりする機能があります。

AI認証で「誰が測ったか」を即時特定し、管理者の目視負担を減らす

保存された画像を管理者が一枚一枚確認するのは大変な手間ですが、AI認証ならその負担を劇的に減らせます。

あらかじめ登録されたドライバーの顔写真データと、測定時の画像をAIが瞬時に照合します。

本人以外が測定したと判定された場合のみアラートを出すことで、管理者は異常なデータだけをチェックすれば良くなります。

●登録データとの自動照合による本人確認
事前の登録写真と測定時の写真をAIが比較し、同一人物であるかを自動判定することで、なりすましを即座に検知します。

●異常検知時の即時アラート通知機能
本人確認ができない場合や認証エラーが出た場合に、管理者へメールやアプリ通知を飛ばし、リアルタイムでの対応を可能にします。

GPS位置情報記録で「いつ・どこで」の虚偽報告をブロックする

顔認証で「誰が」を特定したとしても、まだ抜け穴は残っています。それは「いつ・どこで」測定したかという点です。

特に直行直帰や出張が多い業務形態では、管理者の目が届かない場所での測定が前提となります。

この物理的な距離を悪用した虚偽報告を防ぐためには、GPS(全地球測位システム)による位置情報の記録が欠かせません。

「正しい場所で、正しい時間に測定した」という客観的な事実は、ドライバーのアリバイを守る最強の武器にもなります。

直行直帰や出張先での測定データを位置情報付きで管理する

テレワークや直行直帰が普及する中、自宅や出張先のホテルなど、営業所外でのアルコールチェックは日常的な風景となりました。

しかし、単に測定数値だけを報告するのでは、本当にその場所で測定したのかを証明することができません。

スマートフォンのGPS機能を活用し、測定データに位置情報を付与することで、管理者は遠隔地からの報告も安心して受理できます。

●測定場所の特定によるコンプライアンス強化
測定時の緯度・経度情報を記録し、地図上で測定場所を表示できるシステムであれば、申告通りの場所で検査が行われたか一目瞭然です。

●エリア外での測定に対する抑止効果
あらかじめ登録された自宅や宿泊先以外の場所で測定された場合、管理者に通知が届く仕組みなどもあり、不正な場所での測定を未然に防ぎます。

「検査したつもり」の虚偽報告や場所の偽装をシステムで検知する

「寝坊して時間がなかったから、運転中に測定して報告しよう」「飲み会後に自宅に帰ってから測ったことにしよう」

こうした魔が差した行動は、重大な違反につながります。

GPS記録と測定時刻を厳密に紐付けるシステムであれば、こうした「時間のズレ」や「場所の偽装」を確実に見抜くことができます。

後からデータを改ざんできないクラウド管理と組み合わせることで、完全な証跡を残します。

●リアルタイム送信による事後報告の防止
測定と同時に位置情報と時刻データがクラウドへ送信されるため、後から「あの時測りました」という虚偽のアリバイ工作が通用しません。

●移動中の測定検知
GPSの移動速度を検知し、時速数キロ以上で移動しながらの測定(運転中の測定など)に対して警告を出す機能を持つシステムもあり、安全性を高めます。

不正防止機能付きアルコール検知器・システム選びのチェックポイント

顔認証やGPS機能の重要性は理解できても、市場には数多くの製品が溢れており、どれを選べばよいか迷う管理者も少なくありません。

高機能であれば良いというわけではなく、自社の運用スタイルやドライバーのITリテラシーに合ったものを選ぶことが、定着への近道です。

不正防止と業務効率化を両立させるために、必ず確認しておきたい選定基準を解説します。

スマートフォン連携型か一体型か?運用スタイルで選ぶ

不正防止機能を搭載した検知器には、大きく分けて「スマホ連携型」と「カメラ内蔵一体型」の2種類があります。

それぞれの特徴を理解し、ドライバーが使いやすく、かつ管理者が管理しやすいタイプを選定しましょう。

●スマートフォン連携型(アプリ型)
ドライバー個人のスマホや会社支給のスマホに専用アプリを入れ、Bluetooth対応の検知器と接続して使用するタイプです。

スマホのカメラとGPSを利用するため、初期導入コストを抑えやすく、アプリのアップデートで機能追加もしやすいのが特徴です。

普段からスマホを使い慣れているドライバーが多い組織や、直行直帰が多い営業車などの管理に適しています。

●カメラ内蔵一体型(据え置き・携帯兼用型)
検知器本体にカメラや通信機能が内蔵されており、スマホを介さずに単体で顔認証やデータ送信が完結するタイプです。

スマホの操作が苦手なドライバーや、スマホの支給がない現場でも導入しやすいというメリットがあります。

機器単体で完結するため、接続トラブルなどが少なく、誰でも直感的に操作できる点が強みです。

測定データのクラウド保存と改ざん防止機能の有無

システム選びで最も重視すべきは、「データの真正性」が担保されているかどうかです。

測定結果が検知器本体やスマホ内にしか残らないタイプでは、紛失やデータ消去のリスクに加え、改ざんの疑念を払拭できません。

必ず測定データが即座にクラウドサーバーへ送信され、管理者であっても数値を修正できない仕様になっているかを確認してください。

●クラウドへの自動送信とリアルタイム反映
測定終了と同時にデータがサーバーへ送られ、管理画面に即座に反映される機能は必須です。タイムラグがないことで、異常値が出た際の迅速な指示が可能になります。

●修正履歴の記録(監査証跡)機能
誤入力などでやむを得ずデータを修正する場合でも、「誰が」「いつ」「なぜ」修正したかがログとして残り、元のデータも消えずに保存される機能が必要です。これがなければ、データの信頼性は保証されません。

まとめ

アルコールチェックにおける不正は、決して「バレなければいい」で済まされる問題ではありません。

一度の過ちが、長年積み上げてきた企業の信頼を崩壊させ、大切な従業員やその家族の人生までも狂わせてしまいます。

顔認証やGPS機能を活用したシステム導入は、単なる監視強化ではなく、真面目に業務に取り組むドライバーを「疑いの目」から守るための防波堤です。

「誰が」「いつ」「どこで」測定したかをテクノロジーで証明することは、ドライバーにとって最強のアリバイとなり、管理者にとっては揺るぎない安心材料となります。

「うちは大丈夫だろう」という性善説に頼るのではなく、仕組みでリスクを封じ込めることこそが、責任ある企業の姿です。

今の管理体制に少しでも不安を感じているなら、取り返しのつかない事故が起きる前に、確実な記録が残るシステムへの切り替えを検討してみてください。

その一歩が、会社と従業員の未来を守る大きな決断となるはずです。