2025.11.26

  • コラム

アルコールチェックの中間点呼、紙運用はもう限界?クラウド導入で変わる安全管理

運送業や旅客輸送業における「点呼」は、安全運行を支える基本業務の一つです。なかでも近年、注目されているのが「中間点呼」と呼ばれる乗務途中の安全確認です。これは一度出発した後に、運行中の運転者と連絡を取り、アルコールチェックや健康状態の確認を行う重要なプロセスです。

中間点呼は国土交通省の規則に基づく義務であり、違反すれば行政処分の対象となります。しかし、現場では紙による記録や電話連絡による対応が多く、点呼の実施や記録の精度に課題を抱えている事業者も少なくありません。特に夜間運行や長距離運行が多い業態では、点呼担当者の確保や記録管理の手間が現場の大きな負担となっています。

こうした課題に対応する手段として、クラウド型のアルコールチェック・点呼システムが広まりつつあります。ITの力を活用することで、記録の自動化・保存の効率化・遠隔地対応など、従来の課題を大きく改善できる可能性があります。

この記事では、中間点呼の基礎知識から法的根拠、運用上のリスクと課題、そしてクラウド型システムの具体的な活用方法まで解説します。現場の安全管理や業務効率化に取り組む管理者にとって、実践的な判断材料となる内容をお届けします。

中間点呼とは?運送・旅客業での法的義務を正しく理解する

運送業や旅客業では、運転者の安全確保を目的とした「点呼」が法律で義務付けられています。なかでも注目すべきなのが、一乗務の途中で実施する「中間点呼」です。これは乗務前・乗務後の点呼とは異なり、運転中に健康状態やアルコールの有無を確認する重要な安全管理業務です。

しかし、中間点呼の正しい定義や実施条件、どの法律に基づく義務なのかを曖昧なまま運用しているケースも少なくありません。対応を誤ると法令違反や行政処分につながる可能性もあります。

中間点呼の定義と目的

中間点呼とは、乗務前や乗務後の点呼とは別に、運行の途中で行う安全確認のことです。正式には「乗務途中の点呼」とも呼ばれ、運転者の状態や運行の状況を把握し、安全運転を継続できるかをチェックすることが目的です。

中間点呼は単なる連絡ではなく、点呼者が運転者と確実にやり取りし、記録として残す必要があります。業務途中の体調変化やトラブルへの早期対応を可能にし、事故防止に直結する重要な管理項目です。

法的根拠と義務の対象

中間点呼の実施は、以下の法令により明確に義務付けられています。

●貨物自動車運送事業輸送安全規則 第7条
一乗務が4時間を超える場合、中間点呼の実施が義務化されています。特に長距離輸送や複数営業所をまたぐ運行が該当します。

●旅客自動車運送事業運輸規則 第38条の2
深夜帯や長時間にわたる乗務の場合に、中間点呼の実施が求められます。バスやタクシーなど、旅客輸送に関わる事業者が対象です。

●道路運送車両法・道路交通法に基づくガイドライン
アルコールチェックや健康状態の確認方法についても、国家公安委員会の基準が適用されます。

これらの法令では、点呼を行うタイミング・確認内容・記録の保存が詳細に定められており、適切に実施しない場合は違反として行政指導や処分の対象となります。

実施が求められるケースとタイミング

中間点呼は、すべての運行に必要なわけではありません。対象となるのは、以下のようなケースです。

●一乗務の拘束時間が4時間を超える場合
荷主との調整や積み込み・配送時間が長引く業務においては、中間点呼が必要です。

●深夜や早朝にまたがる運行
0時~5時を含む時間帯の運行では、運転者の体調確認が特に重要とされ、点呼実施が義務付けられています。

●運行中にトラブルが発生した場合
事故・故障・大幅な遅延などがあった場合は、予定外でも中間点呼が求められます。

●拠点間の乗り継ぎ・中継運行がある場合
他の営業所に引き継ぐ運行では、引き継ぎ時に点呼を行う必要があります。

これらに該当する場合、点呼者は運転者の状態を直接または遠隔で確認し、その結果を記録として保存する義務があります。タイミングを見落とすと、重大な法令違反につながる可能性があります。

中間点呼で確認すべき3項目:アルコール・健康・運行状況

中間点呼で確認すべき項目は、法律や各種ガイドラインで明確に定められています。確認漏れは重大な法令違反につながるため、実務においては内容を正しく理解し、確実に対応する必要があります。

アルコールチェックの義務と注意点

アルコールチェックは中間点呼の中でも、特に厳格な実施が求められる項目です。道路交通法に基づき、運転者は酒気を帯びた状態で運転してはならず、事業者はその確認を義務付けられています。

●測定方法と使用機器
呼気中のアルコール濃度を測定するには、国家公安委員会が認定したアルコール検知器を使用する必要があります。簡易的な非接触型や市販機器では基準を満たさない場合があるため、認定機種の使用が必須です。

●測定者と記録の取り扱い
点呼者がその場にいない場合でも、遠隔での映像確認や機器連携によって測定値を把握し、記録に残す必要があります。自己申告だけでは不十分で、記録の証拠性が求められます。

●アルコール検知器の校正
定期的な機器校正も義務の一環です。精度の低下した機器による測定は、記録として無効と判断される恐れがあります。

健康状態の確認ポイント

長時間の乗務や夜間運行では、運転者の健康状態が刻一刻と変化するため、適切なタイミングでの確認が不可欠です。

●主な確認内容
発熱、倦怠感、目の疲れ、眠気、吐き気など、運転に支障をきたす体調の変化がないかを確認します。事業者は運転者の主観だけでなく、言動や表情、声の調子なども含めて総合的に判断する必要があります。

●疲労の蓄積のチェック
連続運転による疲労は集中力や判断力を低下させます。点呼時に「眠気はないか」「休憩は十分に取れているか」をヒアリングし、無理のない運行が継続できるかを評価します。

●確認方法
対面またはビデオ通話などで、運転者の状態を目視または音声で確認することが推奨されます。電話のみでの確認は、体調変化を見逃す可能性があるため注意が必要です。

運行状況・遅延・トラブルの有無

安全管理の観点では、運行が予定通りに進行しているかどうかの把握も、中間点呼で重要な項目です。

●現在地の確認
運行計画に対して進行が遅れていないか、地理的な位置情報をもとに確認します。カーナビの履歴やデジタコのデータを活用することで、状況を客観的に把握できます。

●遅延・トラブルの報告
事故やトラブルの有無、交通渋滞や悪天候による遅延があるかを点呼時に聞き取り、必要に応じて本社・営業所側での対応判断を行います。

●乗務継続の可否
これらの状況を総合的に判断し、運行継続が可能かどうか、あるいは中断・応援要請が必要かを決定します。

これら3つの確認項目を怠ると、後述するように法令違反や事故につながる重大なリスクをはらみます。点呼者と運転者の両者が「確認すべき内容」を明確に把握し、共通理解のもとで対応する体制づくりが重要です。

中間点呼を怠るリスク:法令違反・処分・事故の可能性

中間点呼は法令で定められた「義務」であり、怠った場合には様々なペナルティや事故リスクが発生します。特に、実際の行政処分例や事故との関連性は、管理者が制度の重要性を認識する上での判断材料になります。

実際に起きた不適切点呼の例

●アルコールチェック未実施による行政処分
ある運送会社では、長距離運行中の中間点呼でアルコールチェックを省略。監査時に記録不備が発覚し、30日間の営業停止処分を受けました。

●形骸化した点呼内容による是正勧告
健康確認を形式的に済ませたと判断されたバス事業者が、運輸局より改善命令を受けた事例もあります。点呼記録には実態を伴った内容が必要であり、テンプレート入力やチェックリスト形式だけでは不十分です。

●点呼漏れによる事故の誘発
中間点呼を怠った結果、運転者の体調異常に気づかず、その後の運転中に意識を失って衝突事故を起こした事例もあります。人命に関わる重大事故を防ぐには、確実な点呼が不可欠です。

放置・未実施によるリスク

●監査での指摘と営業停止リスク
点呼記録の未実施・記録不備は、運輸局による監査での主要なチェック項目です。指摘を受けると、改善命令や営業停止といった厳しい処分につながります。

●保険適用外のリスク
事故が発生した際、中間点呼の記録がなかったり、虚偽記載がある場合には、運送保険や自賠責の支払い対象外と判断されることがあります。

●企業の信頼失墜と取引停止
法令違反や事故発生により、荷主からの信頼を失い、取引停止となった事例もあります。点呼体制は企業の安全管理姿勢そのものと見なされます。

中間点呼を「ただの業務」と軽視することは、企業の存続すら脅かす重大なリスクを抱えることにつながります。実務上の手間を理由に放置せず、制度として確実に運用する意識が必要です。

従来の紙・対面点呼運用の限界と課題

現在も多くの事業者では、紙や電話を使ったアナログな方法で点呼が行われています。しかし、こうした従来型の運用方法には、現場の負担や制度的リスクが多く潜んでいます。中間点呼の実効性を高めるには、まず従来運用の課題を明確に把握する必要があります。

記録ミス・漏れの発生原因

紙の記録や口頭確認を前提とする点呼では、人為的なミスや記録の抜けが起こりやすくなります。

●記入ミス・聞き間違いが発生しやすい
手書きでの記録は、数字の書き間違いや聞き間違いが起きやすく、アルコール数値の記録誤りは特に深刻な問題となります。

●点呼者の慣れ・属人化
長年の経験に依存して運用されている場合、点呼内容のチェックが形骸化しがちです。属人的な対応では記録精度にばらつきが出やすくなります。

●多忙時の確認漏れ
朝の出発ラッシュや深夜帯など、複数人の点呼が集中する時間帯には、個別の確認がおろそかになるケースも見られます。

記録の不備は、監査時に指摘される大きな要因となるため、従来方式では限界があるといえます。

記録の保管・管理の煩雑さ

点呼記録は、一定期間の保存が法令で義務付けられており、その管理業務も事業者にとって大きな負担となります。

●紙台帳の物理的な保管スペースが必要
年単位での保存が求められるため、大量の紙台帳を管理するスペースを確保しなければなりません。特に複数営業所を抱える企業では、拠点ごとの保管負担が大きくなります。

●検索性が極めて低い
監査対応や事故対応で過去の記録を確認する場合、日付・運転者名・内容から手作業で探す必要があり、業務効率が著しく低下します。

●記録の劣化・紛失リスク
湿気・汚れ・火災などによる記録の破損や紛失リスクも、紙管理ならではの弱点です。記録の真正性を問われる局面では致命的な影響を及ぼす可能性があります。

こうした管理上の負担が、結果として記録の簡略化や不正確な運用につながる懸念もあります。

夜間・遠隔地での実施困難

点呼実施の難しさは、拠点や時間帯によっても大きく異なります。特に夜間帯や一人運行のケースでは、物理的・人的制約が顕著になります。

●点呼者が常駐できない営業所がある
小規模拠点や地方営業所では、点呼を担当する管理者が常駐しておらず、適切な点呼ができないケースが生じやすくなります。

●運転者が現場から離れた場所で待機するケース
荷主の構内やサービスエリアなど、事業所から離れた場所での点呼が必要な場合、紙や電話では確認の限界があります。

●夜間の人員配置が困難
深夜帯の中間点呼に対応できるスタッフを確保すること自体が難しく、人手不足が原因で点呼未実施になる事業者も存在します。

このように、従来型の紙・対面ベースの点呼運用では、制度的要件に対応しきれない場面が増えています。点呼の「実施ができない」「記録が残せない」という現実的な制約を解消するには、新たな手段が必要です。

クラウド型アルコールチェック・点呼システムとは?

近年、IT技術の進展により、クラウド型の点呼システムが実用段階に入り、多くの運送・旅客事業者で導入が進んでいます。クラウド型とは、インターネットを通じて点呼やアルコールチェックを遠隔・非対面で実施し、その内容を自動で記録・保存する仕組みを指します。

システムの基本機能と仕組み

クラウド型点呼システムには、従来の課題を解決するための機能が多く搭載されています。

●アルコールチェッカーとの連携
国家公安委員会認定のアルコール検知器と連携し、測定結果をリアルタイムでシステムに送信・記録します。手書き不要で記録ミスも防げます。

●ビデオ通話機能による遠隔点呼
タブレットやPCを使った映像確認で、運転者の顔色・表情・言動を直接確認可能です。電話では難しい健康確認にも対応できます。

●点呼記録の自動保存
実施日時・点呼者・運転者・アルコール数値・健康状態などの点呼情報を、自動でクラウドに記録・保管できます。改ざん防止の観点からも有効です。

●過去データの検索・抽出が簡単
運転者名や日付などで検索すれば、該当記録をすぐに確認可能。監査対応や事故後の検証作業が格段に効率化されます。

このように、クラウド型は「点呼の実施」だけでなく、「記録の管理・活用」にまで対応できる点が大きな特徴です。

代表的なシステム例

現在、運送・旅客業界では複数のクラウド点呼システムが提供されています。代表的な製品には以下のようなものがあります。

●IT点呼キーパー(株式会社ITbookテクノロジー)
アルコールチェッカー連携・ビデオ通話・記録保存に対応した、業界導入実績の多い製品です。

●運輸DX(富士通Japan)
点呼に限らず、運行管理全体をデジタルで一元化する大型システム。クラウド点呼にも対応しています。

●ALCOMS(アルコムズ)
高精度アルコールチェックとスマホアプリを活用し、中小事業者でも使いやすいUIが特徴です。点呼記録の自動保存やダッシュボード機能が充実しています。

これらのシステムは導入企業や運用規模によって選定が異なりますが、いずれも中間点呼の効率化・法令対応に大きく貢献できるソリューションです。

クラウド型を使うべき6つの理由:管理効率・リスク削減・法令対応

従来の紙・対面ベースでの点呼運用には多くの課題がありました。クラウド型のアルコールチェック・点呼システムを導入することで、それらの課題を根本から解消することが可能です。ここでは、クラウド型システムを導入すべき6つの理由を解説します。

遠隔地・夜間対応が可能になる

●場所に縛られない点呼実施が可能
運転者が遠方にいても、インターネットを利用してビデオ通話やデータ連携により点呼を実施できます。無人の拠点やサービスエリアにいる場合でも、確実な点呼が可能です。

●24時間体制の点呼に対応しやすい
夜間や早朝でも、事業所に点呼者がいなくても遠隔から点呼を実施できるため、人員の配置にかかる負担を大幅に削減できます。

リアルタイムの記録・保存

●点呼実施と同時に自動記録
点呼内容はリアルタイムで記録・保存されるため、後からの入力漏れや記入ミスが発生しません。記録の正確性が向上します。

●記録の改ざん防止
操作履歴や記録の編集制限があるシステムであれば、不正な修正や後からの追記を防止できます。監査時の信頼性が高まります。

過去データの検索・分析が容易に

●検索機能で必要な記録をすぐに表示
運転者名・日時・車両番号などの条件で簡単に検索できるため、監査や事故対応の場面で迅速な情報提供が可能です。

●点呼データの傾向分析ができる
過去の点呼結果をもとに、運転者ごとの健康状態の傾向やアルコールチェックの推移を分析できます。予防的な安全管理に活用できます。

法令・記録様式の自動準拠

●国交省の記録様式に準拠
点呼内容が法定様式に沿って自動保存されるため、法令対応に必要な書式作成の手間が不要になります。

●法改正への自動アップデート対応
システムによっては、記録項目や様式が法改正にあわせて自動更新される機能もあり、管理者の負担を軽減できます。

作業時間・管理工数の大幅削減

●手書き・紙台帳の管理が不要
アルコールチェックの数値入力や点呼内容の手書き記録が不要になり、点呼業務の作業時間を大幅に短縮できます。

●記録の保管・整理も自動化
紙の台帳のファイリングや保管スペースが不要になり、管理業務の効率が大幅に向上します。

内部監査・第三者監査への対応強化

●点呼の実施状況を一元的に可視化
各拠点・各運転者の点呼記録をクラウドで一元管理できるため、内部監査のチェックが容易になります。

●外部監査への提出資料を即時出力
記録のPDF化やCSV出力などが可能なため、運輸局の監査や荷主からの監査対応もスムーズに行えます。

クラウド型点呼システムは、単なる「記録手段のIT化」ではなく、法令対応・業務効率・安全管理のすべてを底上げするソリューションです。導入することで、現場の負担軽減と法令遵守の両立が現実的に実現できます。

クラウド型導入時のチェックポイントと注意点

クラウド型点呼システムは多くのメリットを持ちますが、導入にはいくつかの準備や確認が欠かせません。ここでは、導入前に必ず押さえておくべき実務上のチェックポイントを整理します。

機器の認定・校正と選定ポイント

●国家公安委員会認定機器の使用が必須
アルコール検知器は、国家公安委員会が認定した機器である必要があります。認定外の機器では法令違反となる恐れがあります。

●機器の校正・交換スケジュールの確認
使用機器は定期的な校正が求められます。メーカーや販売代理店と校正スケジュールを明確にし、運用を止めない体制を整えることが重要です。

●耐久性や携帯性など運用条件に合った製品を選定
車載使用・遠隔使用が前提となる場合、耐衝撃性・防水性・バッテリー持続時間などの条件も確認しましょう。

通信環境・デバイス要件

●LTE通信環境やWi-Fiの確保が前提
点呼端末とクラウドがリアルタイムで連携するには、安定した通信環境が必要です。営業所・車庫・待機場所で通信テストを実施しましょう。

●使用デバイスのスペックと互換性を確認
タブレットやスマートフォンのOSバージョン・メモリ・カメラ性能が、システム要件を満たしているか事前に確認する必要があります。

●予備機・充電体制の整備
万が一の通信障害や機器故障に備えて、予備端末やモバイルバッテリーの用意も検討すべきです。

社内運用ルール・教育の整備

●点呼実施者向けのマニュアル整備
点呼を担当する運行管理者に向けて、操作方法・記録の確認方法・トラブル対応の流れを明記したマニュアルが必要です。

●運転者への操作教育と意識づけ
新しいシステムを導入する際は、運転者にも機器の使い方や点呼の流れを丁寧に周知する必要があります。誤操作や忘れ防止のための教育が欠かせません。

●管理者による運用チェック体制の構築
実施状況を定期的にレビューし、記録の抜け・点呼の未実施がないかをチェックする体制も整備しておく必要があります。

これらの事前準備を怠ると、クラウドシステムのメリットを十分に活かせないだけでなく、導入後のトラブルや現場混乱の原因にもなります。導入は「製品を買うこと」ではなく「運用体制をつくること」であると捉えるべきです。

導入までのステップ:比較検討〜社内展開までの流れ

クラウド型点呼システムを効果的に導入するには、単に機器やサービスを選ぶだけでなく、社内全体の運用体制や現場との連携を見据えたステップが重要です。以下では、導入の流れを3つの段階に分けて整理します。

複数システムの比較検討

●初期費用・ランニングコストを把握する
システムごとに初期導入費用や月額利用料が異なります。長期的な運用コストを含めて比較することが重要です。

●自社の業務規模に合うシステムを選ぶ
拠点数・車両台数・乗務員数など、自社の運用規模に対応できる機能を持つ製品を選定します。小規模事業者向けのシンプルな構成もあれば、大手向けの統合型システムもあります。

●法令準拠と将来の拡張性をチェック
国交省の点呼記録要件に対応していることは必須条件です。また、将来的に他の運行管理システムと連携できるかも重要な判断材料となります。

トライアル運用と社内フィードバック

●一部拠点でのパイロット導入
まずは一部の拠点・運転者に絞って試験導入を行い、現場での使用感やトラブルを洗い出します。

●現場担当者からの意見収集
実際に点呼を行う運行管理者や、機器を操作する運転者からのフィードバックを集め、操作性や不明点を把握します。

●運用ルールの微調整
トライアル結果をもとに、点呼マニュアルや業務フローを現実的な内容に調整します。記録の確認方法やトラブル時の対応などを明文化しておくと効果的です。

本格導入・定着のポイント

●進捗管理とスケジュール共有
導入ステップごとの進捗を「誰が、いつ、何をするか」で明確にし、社内全体に周知します。特に複数拠点がある場合は、統一的な進行管理が欠かせません。

●説明会や操作研修の実施
全拠点・全乗務員に向けて、操作説明会やオンライン研修を実施します。質問や誤解をその場で解消できる環境を整えることが大切です。

●社内ルールと評価制度への反映
点呼実施の正確さや記録内容の精度を、社内評価や管理指標の一部として設定することで、現場の定着度が高まります。

●定期的な運用レビュー
導入後も定期的にデータを振り返り、実施率・記録精度・トラブル対応状況などをチェックします。改善ポイントが見つかれば、都度社内ルールに反映します。

クラウド型点呼システムは、導入後の定着こそが成功のカギです。システムを動かすのは人である以上、社内教育と現場の声を取り入れた運用設計が必要不可欠です。

まとめ

中間点呼は、運送・旅客業における安全運行の基盤であり、法的にも義務付けられた重要な業務です。アルコールチェック・健康状態・運行状況の3項目を確実に確認することで、事故や法令違反のリスクを未然に防ぐことができます。

しかし、従来の紙・対面ベースの点呼には、記録ミス・保管の煩雑さ・人員配置の制約といった多くの課題がありました。これに対してクラウド型の点呼システムは、遠隔地・夜間対応、記録の自動保存、リアルタイム管理などの多くの利点を持ち、制度対応と業務効率化を同時に実現できます。

導入を成功させるには、法令準拠機器の選定、通信環境の整備、社内ルールの明確化、そして現場のフィードバックを反映した運用設計が必要です。段階的に導入し、現場との連携を重視することで、クラウド点呼は単なるITツールではなく、「安全と効率を守る仕組み」へと昇華します。

点呼業務を負担から価値ある管理体制へと変えるために、今こそクラウド型への転換を検討する絶好のタイミングです。安全管理と法令遵守を確実に実行できる体制構築の一歩として、クラウド点呼の導入を前向きに検討してみてください。