2024.12.06
- コラム
安全運転管理者が必要な事業所の条件と選任後の業務とは?
安全運転は企業の社会的責任として重要なテーマです。事業所で使用する車両が増えるにつれ、交通事故のリスクや法的な義務が大きな課題となります。そうした中で注目されるのが、安全運転管理者の選任とアルコールチェック義務化の制度です。
2023年12月1日から、一定の条件を満たす白ナンバー車両を使用する事業者に対して、アルコール検知器を用いたアルコールチェックの義務が施行されました。このような法改正は、企業が安全運転の取り組みを強化するための一環といえます。
本記事では、安全運転管理者の選任基準やアルコールチェック義務化の詳細を徹底解説し、どのようなケースで対応が必要かを具体的に解説します。読者が自社の状況に応じた対応を理解し、効果的に実行できるようサポートします。
安全運転管理者の選任基準とは?
安全運転管理者の選任基準は、企業が安全運転体制を整えるための重要な指針です。この基準は、事業所が保有または使用する車両台数や車種に基づいて定められています。事業の規模や活動内容に応じて適切な管理体制を構築することが求められます。
選任が必要なケース
安全運転管理者の選任が義務付けられるのは、特定の条件を満たす事業所です。以下に、その具体的な条件を示します。
● 車両台数と車種の基準
乗車定員が11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用する事業所では、安全運転管理者の選任が義務付けられています。この台数には、事業所が直接所有する車両だけでなく、リース車両や従業員のマイカーも含まれます。マイカーを業務で使用する場合は、企業としてその管理責任を果たすことが求められます。
● リース車両やマイカーの取扱い
リース車両は契約形態にかかわらず、事業所の車両台数としてカウントされます。従業員のマイカーを業務利用する場合も、その台数が選任基準の計算に含まれます。見落とされがちな車両も選任要件の対象となる点に注意が必要です。
選任が不要なケース
一方で、安全運転管理者の選任が不要となるケースも存在します。以下の例を参考に、自社の状況を確認してください。
● 運行管理者が選任されている場合
運行管理者は、安全運転管理者と類似した業務を担いますが、運行管理者は主に事業用車両(緑ナンバー)を対象とし、安全運転管理者は白ナンバー車両を対象とします。そのため、運行管理者が既に選任されている事業所では、安全運転管理者の選任義務が免除される場合があります。ただし、業務内容や対象車両によっては両者を明確に分ける必要があるため、詳細な確認が重要です。
● 複数拠点で基準未満の車両台数の場合
事業所ごとの車両台数が基準未満の場合は、安全運転管理者の選任が不要となります。各拠点がそれぞれ4台の車両を使用している場合、全体の車両数が多くても基準未満とみなされる可能性があります。ただし、運転業務が広範囲にわたる場合や拠点間で連携する場合には、管理体制の整備が推奨されます。
アルコールチェック義務化の背景と詳細
2023年12月1日より、白ナンバー車両を使用する一定の事業者に対して、アルコール検知器を用いたアルコールチェックの義務が施行されました。この制度は、交通事故防止を目的に制定され、多くの企業にとって新たな対応が求められる内容です。
白ナンバー車両にも適用される義務
これまでアルコールチェック義務は主に事業用車両(緑ナンバー)を対象としていました。しかし、法改正により、白ナンバー車両を業務で使用する事業者にも適用されるようになりました。
● 対象となる事業者
乗車定員が11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用する事業所では、安全運転管理者の選任が必要であり、これらの事業所はアルコールチェック義務の対象となります。ただし、これらの条件を満たさない小規模な事業所や個人事業主は対象外となります。
● 新基準導入の背景
アルコールが関与する事故を未然に防ぐため、すべての事業者に対して厳格なルールが求められています。飲酒運転のリスクを減少させる目的で導入されたこの義務は、企業の安全文化を強化する一環でもあります。
アルコール検知器の使用方法と記録のポイント
アルコールチェックの実施においては、以下のプロセスを遵守する必要があります。
● アルコール検知器を用いたチェックの流れ
運転者は業務開始前にアルコール検知器を使用し、酒気帯びの有無を確認します。この結果を速やかに記録し、管理者が適切に把握することが求められます。
● 記録保存の期間と形式
チェック結果の記録は1年間保存する義務があります。記録形式については紙媒体またはデジタル形式のどちらでも許容されていますが、後の監査を見越して簡単に提出できる形で管理することが推奨されます。
安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者は、選任後に企業内で運転者の安全を確保するための重要な役割を担います。具体的には、日常業務の監督や必要な記録の管理など、多岐にわたる業務が求められます。
日常的な業務内容
安全運転管理者の主な業務は、運転者の監督と交通事故防止のための措置です。以下はその具体例です。
● 運転者の健康管理と指導
運転者の健康状態を把握し、適切な運転が可能か確認します。必要に応じて、安全運転に関する指導や教育を実施します。
● 定期的な講習の実施
運転者に対して、交通ルールや安全運転に関する講習を定期的に行います。この講習は法令遵守のためだけでなく、従業員の安全意識向上にも役立ちます。
● 運行記録の管理
日々の運行記録をチェックし、過労運転や違法行為の有無を確認します。記録の分析により、潜在的なリスクを特定し、対策を講じます。
アルコールチェックとの関連
アルコールチェックの義務化により、安全運転管理者の業務はさらに重要性を増しています。
● 日々のチェックの実施
運転者が業務開始前にアルコール検知器を使用し、その結果を記録します。異常があった場合には、運転を中止させるだけでなく、原因を追究し再発防止策を講じます。
● 記録管理と監査への対応
アルコールチェックの記録を管理し、監査が入った際に迅速に提出できる体制を整えます。法的リスクを回避しつつ、社内の安全管理体制をアピールすることができます。
安全運転管理者選任のメリット
安全運転管理者を選任することで、企業には多くのメリットがもたらされます。事業運営の効率化と安全性の向上が期待できます。
事故防止への効果
安全運転管理者が適切な管理を行うことで、交通事故を未然に防ぐ効果があります。
● リスクの特定と削減
運転記録やアルコールチェックのデータをもとに、潜在的なリスクを特定し、事故防止策を講じることが可能です。
● 損害や法的リスクの回避
事故が減少することで、賠償や保険料の負担を軽減できます。法令違反による罰則を防ぐことにもつながります。
従業員の意識向上
アルコールチェックや講習を通じて、従業員の安全意識を高めることができます。
● 企業文化の改善
安全運転への取り組みを通じて、従業員間に責任感と連帯感を育むことができます。働きやすい環境を構築できます。
● 安全への意識強化
チェックや講習を繰り返し行うことで、安全が重要であるとの認識が従業員に浸透します。この結果、日常業務においても安全意識が向上します。
選任や義務化対応のポイント
安全運転管理者の選任やアルコールチェック義務化への対応を進める際には、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
安全運転管理者の育成方法
適切な管理者を育成するためには、資格取得や研修が欠かせません。
● 必要な資格と要件
安全運転管理者になるには、一定の要件を満たし、適切な教育を受ける必要があります。法令に基づき、管理者候補者に必要なスキルを確認してください。
● 研修内容の充実
地域の講習会や専門機関で提供される研修を受講することが推奨されます。実践的な知識やスキルを得ることができます。
アルコール検知器の選び方
義務化対応には、適切なアルコール検知器を選ぶことが不可欠です。
● 選定時のポイント
使いやすさ、測定精度、記録機能の有無を基準に選ぶことが重要です。測定データが電子的に保存できる機器は、管理の効率化に役立ちます。
● おすすめ製品例
市場には多くの製品が存在しますが、信頼性の高いメーカーの製品を選ぶことをお勧めします。予算や業務規模に応じた選択が重要です。
まとめ
安全運転管理者の選任基準やアルコールチェック義務化は、企業にとって安全管理の新たな基盤となる制度です。これらを適切に実施することで、事故のリスクを軽減し、法令遵守を確保することが可能です。
本記事を通じて、自社の状況を見直し、必要な対応を進めるきっかけとしていただければ幸いです。安全運転の取り組みは、企業と従業員の双方にとって大きなメリットをもたらします。この機会に、管理体制を見直し、安全で信頼される事業運営を目指しましょう。