2025.02.04
- コラム
2025年4月施行!貨物軽自動車運送事業者も安全管理者の選任義務化
2025年4月1日から、貨物軽自動車運送事業者に対する安全対策が大幅に強化されます。この新制度は、事業用軽自動車の事故増加を背景に、安全管理者の選任や業務記録の作成・保存など、複数の義務を事業者に課すものです。
本記事では、制度改正の背景から具体的な義務内容、罰則、個人事業主の対応まで、詳細に解説します。これらの情報を理解し、適切に対応することで、安全な運送業務の継続が可能となります。
制度改正の背景
近年、EC市場の急速な拡大に伴い、宅配便の取扱個数が増加しています。特に、物流センターや小売店から消費者への配送手段として、軽自動車を用いた運送の需要が高まっています。
しかし、平成28年から令和5年にかけて、事業用軽自動車の死亡・重傷事故件数が約4割増加しており、安全対策の強化が急務となっていました。
新制度の施行スケジュール
新制度は、2025年4月1日から施行されます。ただし、既存の貨物軽自動車運送事業者に対しては、以下の猶予期間が設けられています。
●貨物軽自動車安全管理者の選任:施行後2年間
●特定の運転者への特別な指導および適性診断の受診:施行後3年間
これらの猶予期間内に必要な対応を行うことが求められます。
新制度の概要
新制度では、貨物軽自動車運送事業者に対して以下の5つの義務が課されます。
1. 貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講の義務付け
営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で講習を受講させることが義務付けられます。選任時には、運輸支局等を通じて国土交通大臣への届出が必要です。
2. 業務記録の作成・保存の義務付け
毎日の業務開始・終了地点や業務に従事した距離などの記録を作成し、1年間保存することが求められます。
3. 事故記録の作成・保存の義務付け
事故が発生した場合、その概要や原因、再発防止対策などの記録を作成し、3年間保存することが義務付けられます。
4. 国土交通大臣への事故報告の義務付け
死傷者を生じた事故など、一定規模以上の事故について、運輸支局等を通じて国土交通大臣への報告が必要です。
5. 特定の運転者への指導・監督および適性診断の義務付け
過去に重大な事故を起こした運転者、初任運転者、高齢運転者などに対して、特別な指導と適性診断の受診が義務付けられます。運転者の氏名や指導・適性診断の受診状況を記載した「貨物軽自動車運転者等台帳」を作成し、営業所に備え置く必要があります。
既存事業者への猶予期間
新制度の施行に伴い、既存の貨物軽自動車運送事業者には以下の猶予期間が設けられています。
●貨物軽自動車安全管理者の選任:施行後2年以内(2027年3月末まで)
●特定の運転者への特別な指導および適性診断の受診:施行後3年以内(2028年3月末まで)
これらの猶予期間内に、必要な対応を完了することが求められます。
罰則規定
新制度では、各義務に違反した場合、以下のような罰則が適用されます。違反内容ごとに処分の種類や期間が異なるため、しっかりと確認しておきましょう。具体的な罰則の詳細については、国土交通省の公式発表や関連法令を参照してください。
1. 貨物軽自動車安全管理者の選任義務違反
【違反内容】
貨物軽自動車安全管理者を選任しなかった場合
【罰則】
事業停止処分(30日間)
貨物軽自動車の運行管理を適切に行うため、安全管理者の選任は必須です。未選任のまま営業を続けると、業務停止処分となるため注意が必要です。
2. 貨物軽自動車安全管理者の選任(解任)の未届出・虚偽届出
【違反内容】
貨物軽自動車安全管理者の選任や解任を届出しなかった場合、または虚偽の届出を行った場合
【罰則】
●未届出の場合
初回違反:警告
再違反:車両停止処分(10日間)
●虚偽の届出の場合
初回違反:車両停止処分(40日間)
再違反:車両停止処分(80日間)
虚偽の届出はより重い処分が科されます。正確な情報を届け出るようにしましょう。
3. 貨物軽自動車安全管理者の講習受講義務違反
【違反内容】
貨物軽自動車安全管理者が講習を受講しなかった場合
【罰則】
初回違反:車両停止処分(10日間)
再違反:車両停止処分(20日間)
講習の未受講は、安全管理能力の低下につながるため、違反すると車両停止処分が科されます。
4. 貨物軽自動車運転者等台帳の作成・保存義務違反
貨物軽自動車の運転者台帳を作成・保存していない、または記載内容に不備がある場合
作成していない場合
運転者台帳を作成していない場合、運転者の人数や作成状況に応じて罰則が異なります。
運転者5名以下
初回違反:警告
再違反:車両停止処分(10日間)
運転者6名以上
初回違反:車両停止処分(10日間)
再違反:車両停止処分(20日間)
全く作成していない場合
初回違反:車両停止処分(20日間)
再違反:車両停止処分(40日間)
記載事項の不備がある場合
台帳の記載事項に不備がある場合、作成義務違反と同様に罰則が適用されます。
初回違反:警告
再違反:車両停止処分(10日間)
運転者台帳は管理の基本となるため、不備があるだけでも処分対象となります。正しく作成・保存しましょう。
5. 貨物軽自動車運転者等台帳の保存義務違反
【違反内容】
作成した運転者台帳を適切に保存していない場合
【罰則】
初回違反:警告
再違反:車両停止処分(10日間)
運転者台帳の保存義務違反は、他の違反と比べると罰則が軽めですが、再違反すると車両停止処分が科されます。長期間の保存が求められるため、適切に管理しましょう。
個人事業主の対応
個人事業主が一人で貨物軽自動車運送事業を営む場合でも、新たな安全対策の義務は適用されます。この場合、基本的に個人事業主自身が貨物軽自動車安全管理者としての役割を担う必要があります。
ただし、配偶者や家族従業者を安全管理者に選任することも可能です。選任には施行後2年の猶予期間が設けられているため、計画的に対応を進めることが求められます。
業務記録や事故記録の作成・保存、特定の運転者への指導・監督および適性診断の受診など、他の義務についても適切に対応する必要があります。これらの義務を怠ると、前述の罰則が適用される可能性があるため、注意が必要です。
よくある質問(Q&A)
Q1. ナスパの貨物軽自動車安全管理者の講習はいつから受講できますか?
貨物軽自動車安全管理者の講習は、2025年2月1日から受講可能です。この講習は、貨物軽自動車運送事業者が営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任することが義務化されることに伴い、選任前に受講する必要があります。
受講はオンラインで行われ、受講者はインターネットを通じて好きな時間に講義を受けることができます。受講手数料は3700円(税込)で、講習用テキスト代も含まれています。
Q2. 貨物軽自動車安全管理者を選任しない場合、どのような罰則がありますか?
貨物軽自動車安全管理者を選任しなかった場合、事業停止処分(30日間)が科される可能性があります。事業の継続に重大な影響を及ぼすため、必ず選任手続きを行ってください。
Q3. 個人事業主が貨物軽自動車安全管理者を兼任する際の負担軽減措置はありますか?
個人事業主が安全管理者を兼任することによる負担を軽減するため、選任には施行後2年の猶予期間が設けられています
Q4. 貨物軽自動車安全管理者の選任は、営業所ごとに必要ですか?
はい、貨物軽自動車安全管理者の選任は、営業所ごとに行う必要があります。各営業所で使用する事業用自動車の台数に応じて、安全管理者を選任し、所定の講習を受講させることが義務付けられています。
Q5. 安全管理者の講習はどのように受講すればよいですか?
貨物軽自動車安全管理者講習は、国土交通省から登録を受けた講習機関が実施します。講習機関の登録は2025年11月1日から開始され、その後、各機関で講習が実施される予定です。具体的な受講方法や日程については、各講習機関にお問い合わせください。
Q6. 運行管理者を選任している場合でも、安全管理者の選任は必要ですか?
運行管理者を選任している場合、貨物軽自動車安全管理者の選任は不要です。ただし、運行管理者が適切に安全管理業務を遂行していることが前提となります。
Q7. 安全管理者の選任や講習受講を怠った場合、どのような罰則がありますか?
安全管理者の選任や講習受講を怠った場合、事業停止処分や車両停止処分などの罰則が科される可能性があります。具体的な罰則内容は、違反の種類や回数によって異なります。
Q8. 個人事業主が安全管理者を兼任する際、特別な資格は必要ですか?
個人事業主が安全管理者を兼任する場合、特別な資格は必要ありません。ただし、所定の講習を受講し、安全管理者としての知識と責任を十分に理解することが求められます。
まとめ
新たな安全対策制度の導入により、貨物軽自動車運送事業者には多くの義務が課されますが、これらはすべて事故の防止と安全な運行の確保を目的としています。
事業者の皆様は、制度の詳細を十分に理解し、適切な対応を行うことで、事業の安全性と信頼性を高めることができます。